鈴虫の近親交配について

鈴虫を飼う場合、近親交配による悪影響があるかないかについては、よく論議の的となる課題だと思います。

正確に論じるのは難しいですね。
実験を行おうとしても、最初に使うオスとメスがどの程度遺伝子的に近い(あるいは遠い)かによって、同じ年数を経過した後のその子孫の遺伝子の状態は違ってきますからね。

また「悪影響」と言っても、定義をきちんとしておかないと、観察者の主観によって変わってきますからね。


悪影響がある、という意見もありますし、特に欠陥などがない個体同士の近親交配は問題がない、という意見もあります。

しかし、単純に確たる答えを明言しにくい問題だと思います。
というのは、累代飼育の環境下で、前の世代の鈴虫と比べた時、現世代の鈴虫に何か衰えや欠陥のようなものが感じられる場合、それがはたして近親交配による悪影響なのか、その他の要因による悪影響なのか、判断を下すことが容易にできないからです。

典型的な誤解例としては、近親交配を行った後で、卵のいるマットを乾燥状態で放ったらかし、卵が死滅して全然孵化してこないのを見て、「ああ、やっぱり近親交配のせいで全滅した」と嘆いているような場合(笑)。


近親交配を繰り返すと、生命力・繁殖力・運動能力の低下を引き起こす、という意見がありますが、これらはみな、生物学でいうところの‘密度効果’によっても起こってくる可能性があります。

‘密度効果’の典型的な例は、個体群の密度が高くなると、個体あたりの増加率が低下する、というのもです。
すなわち、死亡率の上昇・産卵(産仔)数の減少・孵化率の低下、といったことです。

これらは、生活空間の不足で互い同士が接触する機会が多くなることにより、ストレスが増え、内分泌系に変調を起こすことが主たる原因と考えられています。

つまり、近親交配を繰り返す結果起こると思われがちな、生命力や繁殖力の低下は、‘密度効果’によっても引き起こされる可能性があり、どちらが原因になっているかを見極めることが難しいわけです。

運動能力の低下も、過密状態であると、十分に体を動かす空間が不足することにより運動不足になることが原因で起こっている可能性もあり、これも近親交配に起因しているか、過密化した環境に起因しているかを見極めることは困難だと言えます。

生命力・繁殖力・運動能力などの低下は、近親交配と‘密度効果’の両方が原因となって相乗効果をなしている可能性も考えられますが、その場合は、どちらがどの程度の影響をおよぼしているかを知る術はないと思います。


密度効果以外にも、「自然淘汰されるべき個体が淘汰されない」ということや、「飼育環境下の過保護な状態」が関わっている可能性も考えられますし、餌による悪影響(本来鈴虫が食べるべきものとはかけ離れたものを与えているとか、残留農薬による悪影響)も考えられます。


僕は、鈴虫の飼育を始めて今年(2018年)で48年目になりますが、いまだに近親交配による影響がどの程度あるか、はっきりとはわからないですね。

はっきりとはわからないのですが、近親交配を避けてできるだけ積極的に、愛好家同士で鈴虫の交換を行うなどしたほうが無難な飼い方ではないか、とは思っています。

鈴虫の飼い方(水)
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